『薔薇だって書けるよ』~薔薇も百合もおいしい~
今回は、「学生時代から好きで、大人になってからも好きで」という、少し切ない大人の百合が味わえる作品です。
『薔薇だって書けるよ』
売野 機子 著/楽園コミックス
全7編から成る短編集で、その中でも「オリジン・オブ・マイ・ラヴ」の3部シリーズが最高に百合です。学生時代から仲良しの男女四人、大人になってその中の男女1組が結婚することになるも、実は他の二人は今もなお親友に恋心を抱いていて…という、月9でドラマ化されてもいいのでは?って感じのお話です。
黒髪ショートヘア美人の神田さん、実は親友の万里子のことが好きで、万里子から借りたハンカチをずっと大切に持っているほど…。そんな神田さんの気持ちを知っているのは、同じく親友の佐古くんに片想いをしている成瀬くんだけ。そして万里子に片想いしている佐古くんは、何度フラれてもめげずに告白し続ける。
どうでしょう…この設定だけでものすごく読みたくなりませんか…。
とりあえず、神田さんのビジュアルが最の高なので描きました↓
キスとかハグとか、そういう意味での恋愛描写は少ないものの、間接的に描かれる心情表現で、誰かを好きになることの嬉しさと切なさが、これでもかと伝わってくる素敵な作品です。
2010年に初版を購入しているので、もう8年近く経つのですが(時が経つのが早すぎてこわい)、作品自体はまったく古くなく、今読んでも…というかこの先いつ読んでも、面白く読める!と確信できる内容なのがまた大変素晴らしいです。
さすが売野機子先生…好きです…。
上記で紹介したお話以外にも、収録されている短編は、どれも胸にチクリと刺さるようなものばかりです。
興味を持っていただけましたら、ぜひぜひ読んでみてください!
新たな百合との出会いに乾杯~!
『終点のあの子』~文学オタク女とリア充美女の百合~
前々回のエントリで山本文緒先生の超絶百合が感じられる『絶対泣かない』をご紹介したら、思ったより反響がありました。というわけで、今回も私の大好きな女性作家さんの小説です。
『終点のあの子 (文春文庫)』柚木麻子 著
プロテスタント系女子校に通うJKたちが、クロスオーバーして登場する短編連作小説です。もう、この“女子校”って響きだけで大変期待しちゃいますよね。そして、期待を裏切らない百合っぷりなんです。
どのへんが百合かと言うと、“中学からエスカレーター式で入学した子たちと、高校からの外部組の子たちのほどよい緊張と摩擦から生まれるドロドロした新たな人間関係が楽しめるところ”です。女子のドロドロした関係って、だいたい百合ですよね。
私が特に好きなお話は「ふたりでいるのに無言で読書」です。登場人物は、クラスNo.1の美人でプライドの高いリア充美女“恭子”と、文学オタクだけど漫研に所属している冴えない女子“早智子”。学校では当然別々のグループに所属している二人ですが、夏休みにたまたま図書館で出会ったことから、少しずつ距離が縮まっていき…という、なんとも美味しいストーリー。
そして、恭子のほうが早智子に対する独占欲が強いのも、これまた最高に百合です。本にまったく興味のなかった恭子も、一生懸命に語る早智子の話に惹きこまれていき…
“恭子はまじまじと見つめてしまう。こいつ、ブスだけど結構可愛いかも。「崖の上のポニョ」に似ている。二人は、なんとなく顔を見合わせ、笑い合う”
なんていう、え…?百合ですね…??みたいな描写も出てくるのです。百合です。百合なので、ぜひぜひ読んでみてください!
↑菅野裕美さんの装画が素敵(百合クズ私物)。確認したら第一刷だった…嬉しい…
柚木先生だいすき人間なので、今後も先生の本が頻出すると思われます。だって百合だもの!だって百合だもの!
すでに次に紹介したい本も決まっているので、めちゃくちゃ楽しみです…。
新たな百合との出会いに乾杯~!
『娘の家出』~私がオバさんになっても~
今回は、思いっきり百合漫画描いてる漫画家さんの、百合漫画ではないほうの作品に関するエントリです。
『娘の家出』
言わずと知れた『青い花』の作者である志村先生が、様々な登場人物の人間模様を描いたオムニバス・ストーリー。いちおう主人公は思春期まっただ中の女子高生まゆこちゃんなんですが、まゆこちゃんのお友だちの家族や、知り合いのお友だちなどなど、様々なキャラクターが主役となって、作品が構成されています。
キャラクターの数だけ色々な関係性を楽しむことができる作品ですが、百合として特に美味しいのは、2巻に出てくる加代さん(独身40代女性)と、元職場の同僚だった奈々ちゃん(バツイチ25歳女性)の百合…!この二人、本当にお付き合いしているところがポイントです!!!この年齢差、たまらん!!!
今まで、自分のことより他人のことを優先するクソ真面目な人生を歩んできた加代さんは、恋愛経験もほぼゼロ。そんな彼女が、夫のDVに悩む奈々ちゃんを元気づけているうちに、奈々ちゃんに誘われてホテルへ…という、超美味しい展開に…。
奈々ちゃんは、 “加代さんがいなかったら今のあたしはないの”と言い、加代さんも、“はじめてできたたった1人の大切な人だもの” と奈々ちゃんに対する想いを語っているあたりが、本当に最高すぎてたまりません!!!!末永くお幸せに!!!!!
他にも、4巻あたりから、SNS経由で出会う女の子二人の百合も堪能できます。こちらも、大変大変美味しくて最高なので、ぜひコミックスを読んでいただければと思います!!!
複雑な人間関係を、こんなにも魅力的かつ全員にスポットを当てて描ける志村貴子先生の手腕には、さすがとしか言いようがありません…。
志村先生、大大大好きです…。
新たな百合との出会いに乾杯~!
『絶対泣かない』~私が男ならキスして抱きしめるのに~
今回のエントリは、ずっと前から絶対書くぞと決めていた私の大好きな作品です。
全15編から成る短編小説集です。短編なので、本はちょっと苦手かも…という方にも、とっても読みやすいと思います。すべて“働く女性”がテーマとなっていて、職業も年齢も様々な女性たちが、仕事を通して自分の人生を自分のものとして歩んでいく様子が描かれています。
↑2014年に文庫フェアで期間限定表紙だったやつ(私物)
15編の中でも特に百合が感じられておすすめなのは、タイムキーパー(ストップウォッチで番組やCMの時間を計り記録することで、正確な進行をサポートする仕事)の女性が主人公の、「気持ちを計る」というお話です。
地方のテレビ局でタイムキーパーとして働く主人公サブちゃん(女性です)と、東京から転職してきたプライドの高い独身女性ディレクター成瀬(なるせ)さん。つんけんしているせいで周囲と折り合いが悪く、仕事でも足を引っ張られて失敗してしまった成瀬さん。そんな成瀬さんが密かに泣いているところを発見してしまったサブちゃんは…
“ああ、私が男だったら。肩を抱いて、頬にキスしてあげるのに”
なんて思ってしまうのです。えっ百合ですか!?となったところに、さらなる追い打ち。
“そう思ったときには、もう体が動いていた。私は、成瀬ディレクターの肩に手を置き、目尻に浮かんだ涙にそっと唇をつけた”
…と、もうこの引用だけで、どんだけ百合なんだよと!!!!最高すぎるよと!!!!!
また、表題作である「絶対、泣かない」という秘書と女性社長のお話も、最高に百合なので、とくに社会人百合がお好きな方には、ぜひぜひ読んでいただきたいです!!!
もちろんそれ以外のお話も、魅力的な女性たちがたくさん登場するので、全編楽しんでいただけると思います…!
新たな百合との出会いに乾杯~!
『青のフラッグ』~異性に恋するってどういう感じ?~
本日は、“青春は甘酸っぱくて美味しいと思われがちだけど時々一生モノの心の傷を残していくよねつらいでも美味しい”って百合が感じられる作品です!
『青のフラッグ』
主人公の太一は、恋人も親友もいない、どこか冷めた高校三年生。そんな太一の幼馴染で人気者のトーマ、さらにトーマに恋する小動物のように可愛い二葉(ふたば)、二葉の親友で超絶美人な真澄(ますみ)ちゃんの四名は、二葉の恋をきっかけに、友達として仲を深めていく。けれど、実はそれぞれ胸に秘めた想いがありー…という、青春恋愛漫画です。
どのへんが百合なのかというと、あらすじからもお察しの通り、二葉と真澄ちゃんの関係です。ほわほわした雰囲気の二葉が小動物だとすると、真澄ちゃんは眼光鋭い猛禽類。二葉にくっつく悪い虫を、片っ端から駆逐してくれる(同級生だけど)しっかり者のお姉さんです。
二人がアイスクリームをシェアしてるシーンなんかも、無駄にえっろいな!と思ってしまいます。すみません…。無駄じゃないんです。最高なんです。二葉と真澄ちゃんは、正反対だからこそ萌える関係の最たる例だな~と思います。
実はそんなしっかり者の真澄ちゃんにも、二葉には言えない秘密があったり、その秘密がきっかけで、トーマの秘密を見抜いたりしちゃうんですが、ネタバレになってしまうので、今回はこの辺で…!
青春恋愛漫画と言うと、キャッキャウフフしてんじゃねーよ!学生さんはお勉強しようね!!!と思いたくなったりもしますよね。しませんかね。
この作品は恋愛というより、“人間がありのままの自分を認めるとはどういうことなのか”、そして“自分と同じように他者を受け入れ生きていくとはどういうことなのか”を描いたものだと思っています。
百合を楽しみながら、主人公たちの目線を通して、他者と関わり生きていくことのつらさや喜びを追体験できる素敵な作品なので、ぜひお手にとってみてください…!
そして、今回のサブタイトルの意味を知って、なるほどねー!!!とひざを打っていただけたらもう百合クズ冥利に尽きます。
新たな百合との出会いに乾杯~!
『響~小説家になる方法~』~殴る蹴るそして書く女~
今回は、才能と嫉妬と暴力が文字通りぶつかり合う百合です。字面だけでおなかいっぱいになりそうです。ごちそうさまです。
『響~小説家になる方法~』
主人公の女子高生「響(ひびき)」は、とある文芸賞に応募したことから、その才能を認知される。一方、響の高校の先輩であるリカもまた、人気作家である父の存在を重く感じながら、作家になることを夢見ていた。響きは、そんなリカとぶつかりつつも絆を深め、破天荒に作家としての人生を歩み始める…という作品です。
2017年のマンガ大賞作品なので、有名すぎて取り上げるのも今さらかなと思ったのですが、せっかくおいしい百合なので…。
百合的においしいポイントはいくつもありますが、私がとくに好きなのは、文芸部の先輩であり、人気作家の父を持つリカちゃんです。
ギャルっぽい見た目で、本を愛し、父の担当編集でもあり響の才能を見出した若手編集者「ふみちゃん」のことが好きすぎるリカちゃん…。いくら美人でおっぱいの大きい編集のお姉さんに頭撫でられたからって、赤面するだろうか…!?いつも大人びた雰囲気のリカちゃんが、突然恋する乙女みたいになっちゃうの、可愛すぎるよ!!!
いつもはポーカーフェイスなリカちゃんが、響の才能に嫉妬して、初めて他人に対して感情をむき出しにしてぶつかるところも最高です。最終的には響もリカちゃんも、「こんなにも私を理解できるのはお前しかいねぇ…」と、お互いのかけがえのなさを再確認するというのがまた最最最高に百合です。
他にも、恋愛小説の大御所なのに自身は恋愛を諦めているベテラン女流作家と、そんな女性にひるむことなく対等に接する響の心温まる交流など…百合っぽい~~~!という描写がたくさんあります。
「こやつ、ムカつくぞ~」というキャラを、響がどんどんぶちのめしてくれるところは、まさにエンタメ!って感じで楽しめますし、百合という視点で見ると、さらにまた美味しい!という、1冊で二度美味しい作品です。
このエントリを書くにあたってぐぐってみたら、なんと今年映画化もされるみたいですね。百合分もしっかりあると、嬉しいな…。
新たな百合との出会いに乾杯~!
『違国日記』~少女よ、年齢差も国境も越えていけ~
今回の作品は、歳の差百合です!その差なんと20歳!ありがたすぎる!!!
『違国日記』
ヤマシタトモコ 著/FEEL COMICS swing
事故で両親を亡くした中学3年生の朝(あさ)は、母の妹である少女小説家の叔母、槙生(まきお/独身・35歳)に引き取られる。親戚たちに啖呵を切って、朝との同居生活をスタートさせる槙生だが、実は人見知りで…という、歳の差同棲百合をふんだんに楽しめる内容になっております。この設定だけで、ごはん3杯くらいいただけますね。ありがとうございます。
百合的においしいポイントは、中学生の朝ちゃんのほうが料理上手で圧倒的に生活力がある点と、朝ちゃんが槙生ちゃんのことを「槙生ちゃん」と呼んでいる点です。う~ん、おいしい…歳の差百合、おいしいよ…。
朝ちゃんにとって槙生ちゃんが謎の生き物になっているところも、リアルで良いなと思います。中学生にとっては、年上の女性ってわりと謎だよね…戸惑いながらも、槙生ちゃんに興味津々な様子が描かれているところ、たまりません。
ゆるーく生きてるように見える“普通の大人っぽくない”槙生ちゃんと、年齢のわりに落ち着きすぎている朝ちゃん。お互いに異邦人だと思っているであろう二人が、心の距離感をはかりながら、じりじりと近づいていく様子に、気が付くと惹きこまれ、目が離せなくなってしまいます。
恋人、親子、友人…そのどれでもなく、けれどお互いがお互いに強く影響を与え合う存在、という絶妙な関係を描けるヤマシタトモコ先生、さすがすぎる。
セリフ回しも何気ない同居生活の描写も、どれもこれもキラキラと光っていて、日常生活を中心に描かれる女性の関係ほど尊いものはないな…と思わされます。
着地点が全然読めないので、二人の関係がどんなふうに変化していくのか、ものすごく楽しみです!さらに百合方面に進んでくれると本当に幸せです。よろしくお願いします。
ヤマシタ先生の作品は、他にも百合っぽいものがたくさんあって、だいたいの女子がイケメンすぎてたまらないので、いずれ取り上げられたらいいな~と思います。
あと、百合には全然関係ないんですけど、コミックスの本文に使われている用紙がとても良質です…はんぱなく滑らかだし、厚いし、すごい…。これがヤマシタトモコ先生の力…。
新たな百合との出会いに乾杯~!